なぜ人間の寿命は永い?

 世界中の生物全体と比較すれば人間の寿命はさして永いほうではないかも知れません。
植物などは並みの哺乳類を遥かに超越する長寿ですから。
ただ、ね……。
僕たちの身近にいる生き物、例えば犬や猫などは人間よりずっと短命なのですね。
昔に比べて確かに寿命は延びました。
動物医学が発達して多くの病や怪我を治せるようになりましたから。
それでも人間には届かないわけですね。
一般に犬猫は人間の4倍の速度で歳をとると言われます。
わんこなら2年で成人、10年になると初老です。
ですから成長も衰えも早い(速い)のです。



 クッキーです。
現在13歳2ヶ月です。
人間でいえば96歳だそうです。
ほんの数ヶ月前まで元気に散歩できていたのに、今となっては足腰が立たず、門前の低い段差すら降りられなくなりました。
単なる老化ではありません。
皮膚炎を患っていて長いことステロイドを服用していたのです。
そのせいで肝臓は肥大し、多飲多尿になり、後ろ足も弱りました。
一日の大半を寝て過ごしています。
ステロイド服用は皮膚病に効果的な療法です。
ただしその量を間違えれば毒になります。
7年ほど前、初めて皮膚病の症状が現れた時にかかっていた動物病院。
そこは診療を教科書どおりに行ったため、この子の体重での上限いっぱいのステロイドを処方しました。
その頃の僕は不勉強だったので獣医を妄信し、処方された薬がどのようなものであるかも調べずただ指示通り飲ませていました。
その飲ませ方がまずかったのです。
後でかかったどの獣医に言わせても、多すぎる量だったのです。
大量のステロイドを長期間服用してしまうと、それを止めた時にリバウンドを起こし、皮膚がさらにひどい状態になってしまうのです。
手遅れでした。
今やクッキーの体はステロイドの副作用で内外ぼろぼろになってしまっています。
人間の4倍のスピードで歳をとるという事は、同じく4倍衰える事をも意味します。
今年に入ってからのクッキーの衰えも早いものでした。
つい数日前まで元気に歩いていたのが何もないところで躓くようになり、さらに数日すると段差に足をとられて転ぶようになり……。
もう何日かすると長時間立っていられないのかすぐに座り込むようになりました。
後ろ足の肉が急に落ちて骨張りました。
介助なしには殆んど立てなくなりました。
なんで若く元気な頃にもっともっと遊んであげなかったのか。
悔やまれます。
海も山も知らず、近所の公園か遠方の動物病院近くにある大きな公園くらいしかこの子は行ったことがないのです。

人間の寿命は永すぎるんです。
馬齢を重ね、日々を貪り、老害に朽ちていく人間には長寿であることにメリットなど無いのです。
それよりはこの子らに一日でも命を与えてあげるほうがよいのです。