悲憤慷慨したこと

 少し悲しいことがありました。
悲しいので書きます。
長文でごめんなさい。


 需要と供給の橋渡しをする有益なサイトがあります。
たとえば古着を処分したいという人と、古着が欲しいという人がいればサイトを通してやりとりができます。
この場合は処分したい側が古着を欲しがっている人を探すか、欲しいという側が古着を処分したがっている人を探すか、のどちらかです。
それぞれに投稿ページや募集ページというものを作成でき、売りたい物やその条件、買いたい物やその条件を記載します。
取引は有形物に限りません。
庭の草抜きを手伝ってほしい、わんこの散歩をお願いしたい、というのもあります。
変わったところでは小説の共同制作をもちかける、というものもあります。
実際、僕も何度か利用しました。
不要になったDVDプレイヤーを売りたいといえば買い手がつきました。
イラストを描いてほしい、動画編集の仕方を教えてほしいという依頼を受けて、その内容を達成し報酬を受け取ったこともあります。

 

jedi-tkms1984.hatenablog.com

 

↑この記事で紹介している『あらいぐまタスカル』さんもその取引を通じて知り合った先です

(誤解のないように書いておきますがタスカルさんは本当にいい人です♪)


 さて、今年の1月中旬。
当該サイトにて「簿記2級を教えてほしい」という依頼がありました。
相手は遠方なのでメール、メッセージアプリでのやりとりです。
当該ページには報酬や何を教わりたいか等が記載されていました。

過去1級に合格し、簿記論も合格した身なればその知識、経験を役立てられる!

と、記載の内容にてお受けするとメッセージを送ったところすぐに返信がありました。
思えばこの時、提示された報酬が時間あたりなのか1項目あたりなのかを確認しておくべきでした。
ここが最大の致命的なミスです。
その後、講習が始まりました。
方法としては先方がメッセージアプリに写真を添付してくる(相手が所持している問題集のページ)

僕がそれを解き、解答と解説をつけて返信(アプリで直接、写真やエクセルデータを添付して送信等)

さらに疑問点があれば相手からメッセージ

同様の手順で返す

という具合です。
簿記の経験がある方なら分かると思いますが、仕訳問題なら1問あたり簡単なもので数十秒、煩雑なものだと2分程で解けます。
しかし総合問題となると10分~30分はかかるでしょう。
おまけにそれに解説を付ける(計算式や文章で解説する他、イラストや図解を作ることも)ワケで、
とりわけ総合問題には総計1時間ほどを要します。
これがたとえば5件送られてきたら5時間です。
実際に対面で教えればここまで時間はかからないでしょうが、とにかく文字と画像だけで正しく伝えようとするとこれくらいかかります。
質問自体は毎日送られてくるワケではありません。
あくまで学習の主体は先方にあるので、分からないところ、解説が欲しいところを送ってくる――という具合です。
平均すると週に5件くらいでしょうか。
商業簿記、工業簿記それぞれにテンプレートを作り、相手に分かりやすいように言葉の意味やポイント、裏ワザなんかも教え……。
検定日の6月上旬まで質問があれば答え、質問があれば答えを繰り返してきました。
また、時には人生相談のようなものにも応じました。
職場での悩み事や転職に関しての相談などです。
僕はカウンセラーでもなければコンサルタントでもないので断定口調でのアドバイスはできません。
ですから自身の経験も交えての受け答えとなりました。

 

6月に入り、先方からのメッセージが途絶えました。
それまで1週間以上質問が来ないこともありましたし、検定日が近いこともあってあまり追い立てるようなこともしたくないと考え、
こちらからのアクションは控えていました。
そうして検定日から1週間後。
相手からは何もありません。
さすがにもう受験も終わっているのだから、何か一言くらい報告があってもいいんじゃないのかと思いました。
なのでこちらから、
「試験の手応えはいかがでしたか?」
と送りました。
返ってきたのは、
『検定のことは個人情報なので答えられません。勉強を続けていくのでまた質問してもいいですか?』
という一文でした。
コナン君なら真っ先に引っ掛かりを覚えるでしょう。
”手応えはどうか?”という問いに対して、”個人情報なので答えられない”。
いったい個人情報とは何なのでしょうか……?
手応えを教えることによって個人が特定されてしまうのでしょうか?
ちょっとこの時点で嫌な予感がします。
スターウォーズなら嫌な予感がするとたいてい現実になります。
そんなところを追及しても意味がないので本題に入ります。

 

「試験も終わって一区切りということで報酬の精算をしたいと思うのですが……」
『どういうことですか?』

 

嫌な予感、2度目です。
正直、報酬とか精算の意味が分からないなら簿記検定2級は受けない方がいいと思います。
役員報酬とか精算表が出てきたら困るじゃないですか。
と思っていたらすぐに次のメッセージが。

 

『今までの分、無料でいいんですよね?』

 

脳のどこを使ったらその言葉が出てくるの?
探偵ポアロは言いました。
灰色の脳細胞を使いなさいと。
僕は目の前が灰色になりそうです。

 

「サイトのページで報酬を記載していたではないですか。有償の条件でこちらもお受けしたのですが……」

 

嗚呼、画面も灰色に見えてきました。
しかし相手からメッセージが来ると音で知らせてくれます。便利ですね。

 

『今さらそんなこと言うのはおかしいです。私の足元を見てそんな話を出しているように見えます。初めから報酬の前提はありません。
今後のやりとりで1ヵ月いくら、とかの提案なら検討します(^^)』

 

前提とはいったい……うごごご!
宇宙の法則が乱れたかと思いました。
ちなみに上記の顔文字は実際に付いてました。
くそっ やられた
きつとあの時、夜神月はこんな気分だったんでしょうね。
僕は思いました。
この人は経理をやったら駄目だ……早くなんとかしないと……。
さらに送られてきたメッセージは目どころか五感を疑うものでした。

 

『あなたとしてもプロの講師ではなく駆け出しの人だと思ったので私が生徒としてやりとりするのも、あなた自身のスキルや経験になり役立つハズです』

 

上から目線どころか天上から目線です……。
僕、行きつけのお寿司屋さんがあるんです。
切り身みたいな巨大な寿司ネタを出してくれるお店で、もう長いお付き合いの気心知れた板前さんもいらっしゃいます。
間違っても言えません。
僕が客として食べに行けば、あなたの板前としてのスキルや経験になり役立つハズだ、だから無料で食わせろ――などと。
言えますか!? あんた、言えますか!?
言うだけならいいでしょう。
でも実行したら食い逃げ、即、お縄です。悪即斬です。
僕は疲れました。
この半年ほどは何だったのか、と。
さらにとどめのメッセージが来ました。

 

『簿記の独学講座は無料でネットで勉強できますよ』

 

もうやめて! とっくに僕のライフはゼロよ!
ここまでのオーバーキルがありましょうか?
1匹のぶちスライムにMP999でマダンテを唱えるでしょうか?
王将を金将銀将、飛車、角行で挟み、唯一動ける先には香車と桂馬を配置するという残酷な王手をかけるでしょうか?
全身萎えて芋虫ほどにも前進かなわぬ有り様となったのでした。
それでも指くらいは動きます。
僕はダイイングメッセージよろしく最後の質問をしました。

 

「今後のことはこれから協議するとして、取り敢えずこれまでの分はお支払いの意思はない、ということでよろしいでしょうか?」

 

こんな相手にも丁寧な口調を心掛ける僕、ステキ。
これにはきっと天からも慈悲の光が、と思っていたら――。

 

『ないですね。ですがどうしてもお金が欲しいということなら、今回を初回ということで5,000円の振り込みを考えています(^^)』

 

心が折れました。
嗚呼、きっとこの人はこの顔文字と同じ顔をして言っているのだろうなあ……。
誠意とは見せるものであって、返ってくるものでも得られるものでも、ましてや求めるものでもない。
こんな格言、既にあります?
無かったら僕の名言として記録しておいてください。
心が粉砕骨折した僕にはもう、次のようなメッセージを送る力しか残されていませんでした。

 

「こちらの勉強代ということにしますので、その5,000円は次回の受験料に充ててください」

 

”次回の受験料”に精一杯の皮肉を込めたところで僕は力尽きました。

 

 

かなり巫山戯た書き方をしていますが正直、怒髪天を衝き、恨み骨髄に入り、憤懣遣る方無く、堪忍袋の緒は切れ、腸は煮えくり返っております。
皆が皆、誠実な人間であるならば世界は平和なのになあ、と思います。
誰か、この気分の処し方を教えてください……。