ヒアリ騒動に思うこと

 神戸港を経由して兵庫県尼崎でヒアリが発見されたという出来事がありました。
このアリ、猛毒の針を持っていて一刺しされれば命を落とすこともあるとか。
殺傷能力に大きさや凶暴性は関係ないということですね。
”毒に冒される”という状況はフィクションの世界ではよくあることですが、現実では即生死にかかわる問題です。
僕はありんこすら苦手なので虫に近づくことはありませんが、なまじ平気な人だと触れてしまうかもしれません。
殺人アリ、殺人バチ、殺人クラゲ、殺人アメーバ……。
どんな生物でも死因に成り得る、というのは当たり前のようで意外と見落としがちかもしれません。

 さて、このヒアリは荷物を通して日本に入ってきたのですが、こうした問題が起こると、
『生態系云々』という意見が出てきます。
つまり本来そこには生息しないハズの生物が人間の行為によって運ばれ、在来種に(特に悪い)影響を及ぼす、というものです。
たしかに現地で荷造りしたのも、船を造ったのも、それを運んだのも人間です。
これら行動を実行しなければヒアリが日本にやって来ることはなかったでしょう。
人間には知識と知恵があって、いろいろな物を作れますから、地球に与える影響は大です。
特定種を絶滅させるどころか、あらゆる生物が生きていけなくなる世界に変えることだって可能でしょう。
人間は生態系に影響を与えてはいけない。乱獲によって種を絶やしてはならない。
という意見は真っ当だと思いますし、頷くところです。
ただ他方、この考え方にはたかが人間ごときが天上の神には遠く及ばないまでも、まるで他のあらゆる生物の上に立ち、
以て地球を支配していると思い込んでいるような傲慢さをも感じてしまうのです。
人間とて地球に生きる生物の一種に過ぎません。
アリやイヌ、トリと同じです。
ならば生態系を壊す、という行為も実は特別視するようなことではなく、自然の一部たる人間の自然な行動の一部ではないか。
そう考え至ると人里に下りてきて人間を殺傷するクマやイノシシに報復狙撃することもまた、ただそれら動物への憐憫を抱くのみでなく、
自然の営みの中の些事に過ぎない……という思考ができてしまいます。

果たして生態系を壊すという行為は自然に背いているのか、それとも自然なのか。
きっとこんなことを考えていること自体、僕は人間が他の生物より一段上のステージにいる生き物だと思っているのでしょうね。
愚かなことです。