玉筋魚の釘煮

 この時期になると、僕の住む地域では昼夜問わず甘い匂いが町を漂い始めます。
イカナゴの釘煮というのをほとんどの家庭が一斉にやるわけです。
一応は神戸名物のようです。
地元の郵便局では「イカナゴパック」なる商品もあるくらいです。
毎年、各家庭で何キロものイカナゴを購い、それぞれの味付けで作ります。
で、それを遠方の知人におすそ分けしたりするわけですね。
オカズとしても成り立ち、熱々ご飯にふりかけて食べても美味しい中々に見事な一品です。
ところがそのお魚、今年は不漁だそうで値が跳ね上がっています。
不況の波はところ嫌わず、といったところでしょうか。
物価というものは上がってもなかなか下がらないものです。
そのせいか今年は釘煮を炊く家庭が少ないようです。
神戸に20余年いる僕にはもう香りも味も飽きたものですが、この時期の風物詩のようなもので、それが見られないのには寂寥たるものがります。
ちなみにスーパーなどでは既に作られた釘煮が売ってありますが、不況もあってかなり高価です。
それに既製品は画一的な味で面白みがありません。
ちびちびと食べる分にはいいのですが……。