悲憤慷慨の2

 こちらの記事の続きです。

 

jedi-tkms1984.hatenablog.com

 


未読の方は先にお読みくださいませ。

 

 当該サイトにはユーザー同士がお互いに評価をつけるシステムがあります。
評価は「良い・普通・悪い」の3段階で、そう評した理由なども書き込めるスペースがあります。
取引をするときは相手がこれまでにどんな取引をして、どんな評価をされているかを参考にします。
今やたいていのサービスにあるシステムですね。
当然、僕も教導を引き受ける前に相手の評価には目を通しました。
良いが20件ほどで普通・悪いの評価はゼロ。
つまり優良なユーザーであったワケです。
その評価を信じたからこそ僕も引き受けようという気になったのですが……。

 

 さて、当然ながら僕も当該相手に評価をつけることができます。
言うまでもなく「悪い」です。
将来の犠牲者を防ぐためにも敬意をしっかり書いておきます。
このサイト、自分が評価されると通知される仕組みになっています。
そういうワケで僕が評価をした5分後くらいに次のようなメッセージが発射されました。

 

『あなたも私の営業妨害したいんですか? 真面目に派遣でもして働かれたらいかがですか? ハローワークも詐欺の会社が多いね~』

 

自分の読解力を疑ってみます。
これは何かの暗号なのか?
一応は日本語文章としての構文になってはいますが、ここまでの経緯とまるで繋がりません。
ひょっとしたら相手は人違いをしているのでは……?
と思ったときでした。

 

『あなたはタチが悪い人だ。私は弁護士は3名以上知っています。20代の頃から程度の低い男性には職場で足を引っ張られることばかりだね~。あなたも小さい人なんだろうね(^^)』

 

こいつ、この顔文字好きやな!
いや、いかんいかん!
このふざけた顔文字に惑わされては!
改めてメッセージを読むと先ほど以上に難解な暗号文です。
まず弁護士とは何なのか?
いえいえ、弁護士が何かは僕も知っています。
問題はなぜこのタイミングで脈絡もなく出してきたのか、です。
相手はこう言いました。
”個人情報なので検定試験の手応えは言えない”と。
どっちかと言うと知っている弁護士の人数を挙げるほうが個人の特定に繋がりそうな気がするのですが……はて?
なんとも面妖な話であります。
その後の”20代の頃から~”という一文も理解不能です。
ただし最後の一文だけは許せません。
これは明らかに人格攻撃ですからね。
その小さな人を騙して簿記の勉強を教えてもらってたんでしょーが!
――っと、ここで深呼吸。
次なるメッセージが飛来しました。

 

『私の投稿を見て悔しいのならそれ以上に自分がやってみたらいかがですか?』

 

ええ、悔しいですとも。
これら難解な暗号が解けないことが。
正直、今までよくこの相手と文章でやりとりができていたな……と自分を小一時間褒めてやりたいところです。
もう何がなにやら分かりません。
僕のライフはゼロを通り越してマイナスです。
ゲームで言えば死体蹴り。
映画インデペンデンスデイの如く、理解も共感も不可能な異星人からの予告なき攻撃を受けたような気分です。
もう何がなにやら分かりません。(2回目)
そして間、髪を入れずに新たな怪文書が届きます。

 

『私は最近1カ月ほど派遣で仕事してました。上手い話とか虫のいい話などを期待することなく地道に真面目に雇用され仕事につくことをオススメします』

 

文章としての意味は分かりますが相変わらず前後との繋がりが見えません。
”1カ月ほど派遣で~”から”真面目に雇用され~”をひと続きとして主張したいのでしょうが、派遣で1ヵ月は自慢できるようなことでも何でもありません。
アルバイトで3か月、のほうがよほど胸を張れる実績でせう。
……と、ここで振り返ってみます。
むむ?
そういえば人生相談を受けていた時も、受け答えがおかしかったような……?
というか明らかに言葉選びを間違えて失礼な物言いになっていることが屡(しばしば)あったような……?
転職回数が多いのも、もしかして……?
はっは~ん。
と、思うも時は既に遅し。
僕が最後にできるのは、ただひとつ。
先方は先週、日商簿記検定2級を受けたばかりです。
なので以下のようにメッセージを送りました。

 

「次回の日商簿記検定2級は11月中旬ですよ」

 

僕って親切な人だな~。
終わり。

悲憤慷慨したこと

 少し悲しいことがありました。
悲しいので書きます。
長文でごめんなさい。


 需要と供給の橋渡しをする有益なサイトがあります。
たとえば古着を処分したいという人と、古着が欲しいという人がいればサイトを通してやりとりができます。
この場合は処分したい側が古着を欲しがっている人を探すか、欲しいという側が古着を処分したがっている人を探すか、のどちらかです。
それぞれに投稿ページや募集ページというものを作成でき、売りたい物やその条件、買いたい物やその条件を記載します。
取引は有形物に限りません。
庭の草抜きを手伝ってほしい、わんこの散歩をお願いしたい、というのもあります。
変わったところでは小説の共同制作をもちかける、というものもあります。
実際、僕も何度か利用しました。
不要になったDVDプレイヤーを売りたいといえば買い手がつきました。
イラストを描いてほしい、動画編集の仕方を教えてほしいという依頼を受けて、その内容を達成し報酬を受け取ったこともあります。

 

jedi-tkms1984.hatenablog.com

 

↑この記事で紹介している『あらいぐまタスカル』さんもその取引を通じて知り合った先です

(誤解のないように書いておきますがタスカルさんは本当にいい人です♪)


 さて、今年の1月中旬。
当該サイトにて「簿記2級を教えてほしい」という依頼がありました。
相手は遠方なのでメール、メッセージアプリでのやりとりです。
当該ページには報酬や何を教わりたいか等が記載されていました。

過去1級に合格し、簿記論も合格した身なればその知識、経験を役立てられる!

と、記載の内容にてお受けするとメッセージを送ったところすぐに返信がありました。
思えばこの時、提示された報酬が時間あたりなのか1項目あたりなのかを確認しておくべきでした。
ここが最大の致命的なミスです。
その後、講習が始まりました。
方法としては先方がメッセージアプリに写真を添付してくる(相手が所持している問題集のページ)

僕がそれを解き、解答と解説をつけて返信(アプリで直接、写真やエクセルデータを添付して送信等)

さらに疑問点があれば相手からメッセージ

同様の手順で返す

という具合です。
簿記の経験がある方なら分かると思いますが、仕訳問題なら1問あたり簡単なもので数十秒、煩雑なものだと2分程で解けます。
しかし総合問題となると10分~30分はかかるでしょう。
おまけにそれに解説を付ける(計算式や文章で解説する他、イラストや図解を作ることも)ワケで、
とりわけ総合問題には総計1時間ほどを要します。
これがたとえば5件送られてきたら5時間です。
実際に対面で教えればここまで時間はかからないでしょうが、とにかく文字と画像だけで正しく伝えようとするとこれくらいかかります。
質問自体は毎日送られてくるワケではありません。
あくまで学習の主体は先方にあるので、分からないところ、解説が欲しいところを送ってくる――という具合です。
平均すると週に5件くらいでしょうか。
商業簿記、工業簿記それぞれにテンプレートを作り、相手に分かりやすいように言葉の意味やポイント、裏ワザなんかも教え……。
検定日の6月上旬まで質問があれば答え、質問があれば答えを繰り返してきました。
また、時には人生相談のようなものにも応じました。
職場での悩み事や転職に関しての相談などです。
僕はカウンセラーでもなければコンサルタントでもないので断定口調でのアドバイスはできません。
ですから自身の経験も交えての受け答えとなりました。

 

6月に入り、先方からのメッセージが途絶えました。
それまで1週間以上質問が来ないこともありましたし、検定日が近いこともあってあまり追い立てるようなこともしたくないと考え、
こちらからのアクションは控えていました。
そうして検定日から1週間後。
相手からは何もありません。
さすがにもう受験も終わっているのだから、何か一言くらい報告があってもいいんじゃないのかと思いました。
なのでこちらから、
「試験の手応えはいかがでしたか?」
と送りました。
返ってきたのは、
『検定のことは個人情報なので答えられません。勉強を続けていくのでまた質問してもいいですか?』
という一文でした。
コナン君なら真っ先に引っ掛かりを覚えるでしょう。
”手応えはどうか?”という問いに対して、”個人情報なので答えられない”。
いったい個人情報とは何なのでしょうか……?
手応えを教えることによって個人が特定されてしまうのでしょうか?
ちょっとこの時点で嫌な予感がします。
スターウォーズなら嫌な予感がするとたいてい現実になります。
そんなところを追及しても意味がないので本題に入ります。

 

「試験も終わって一区切りということで報酬の精算をしたいと思うのですが……」
『どういうことですか?』

 

嫌な予感、2度目です。
正直、報酬とか精算の意味が分からないなら簿記検定2級は受けない方がいいと思います。
役員報酬とか精算表が出てきたら困るじゃないですか。
と思っていたらすぐに次のメッセージが。

 

『今までの分、無料でいいんですよね?』

 

脳のどこを使ったらその言葉が出てくるの?
探偵ポアロは言いました。
灰色の脳細胞を使いなさいと。
僕は目の前が灰色になりそうです。

 

「サイトのページで報酬を記載していたではないですか。有償の条件でこちらもお受けしたのですが……」

 

嗚呼、画面も灰色に見えてきました。
しかし相手からメッセージが来ると音で知らせてくれます。便利ですね。

 

『今さらそんなこと言うのはおかしいです。私の足元を見てそんな話を出しているように見えます。初めから報酬の前提はありません。
今後のやりとりで1ヵ月いくら、とかの提案なら検討します(^^)』

 

前提とはいったい……うごごご!
宇宙の法則が乱れたかと思いました。
ちなみに上記の顔文字は実際に付いてました。
くそっ やられた
きつとあの時、夜神月はこんな気分だったんでしょうね。
僕は思いました。
この人は経理をやったら駄目だ……早くなんとかしないと……。
さらに送られてきたメッセージは目どころか五感を疑うものでした。

 

『あなたとしてもプロの講師ではなく駆け出しの人だと思ったので私が生徒としてやりとりするのも、あなた自身のスキルや経験になり役立つハズです』

 

上から目線どころか天上から目線です……。
僕、行きつけのお寿司屋さんがあるんです。
切り身みたいな巨大な寿司ネタを出してくれるお店で、もう長いお付き合いの気心知れた板前さんもいらっしゃいます。
間違っても言えません。
僕が客として食べに行けば、あなたの板前としてのスキルや経験になり役立つハズだ、だから無料で食わせろ――などと。
言えますか!? あんた、言えますか!?
言うだけならいいでしょう。
でも実行したら食い逃げ、即、お縄です。悪即斬です。
僕は疲れました。
この半年ほどは何だったのか、と。
さらにとどめのメッセージが来ました。

 

『簿記の独学講座は無料でネットで勉強できますよ』

 

もうやめて! とっくに僕のライフはゼロよ!
ここまでのオーバーキルがありましょうか?
1匹のぶちスライムにMP999でマダンテを唱えるでしょうか?
王将を金将銀将、飛車、角行で挟み、唯一動ける先には香車と桂馬を配置するという残酷な王手をかけるでしょうか?
全身萎えて芋虫ほどにも前進かなわぬ有り様となったのでした。
それでも指くらいは動きます。
僕はダイイングメッセージよろしく最後の質問をしました。

 

「今後のことはこれから協議するとして、取り敢えずこれまでの分はお支払いの意思はない、ということでよろしいでしょうか?」

 

こんな相手にも丁寧な口調を心掛ける僕、ステキ。
これにはきっと天からも慈悲の光が、と思っていたら――。

 

『ないですね。ですがどうしてもお金が欲しいということなら、今回を初回ということで5,000円の振り込みを考えています(^^)』

 

心が折れました。
嗚呼、きっとこの人はこの顔文字と同じ顔をして言っているのだろうなあ……。
誠意とは見せるものであって、返ってくるものでも得られるものでも、ましてや求めるものでもない。
こんな格言、既にあります?
無かったら僕の名言として記録しておいてください。
心が粉砕骨折した僕にはもう、次のようなメッセージを送る力しか残されていませんでした。

 

「こちらの勉強代ということにしますので、その5,000円は次回の受験料に充ててください」

 

”次回の受験料”に精一杯の皮肉を込めたところで僕は力尽きました。

 

 

かなり巫山戯た書き方をしていますが正直、怒髪天を衝き、恨み骨髄に入り、憤懣遣る方無く、堪忍袋の緒は切れ、腸は煮えくり返っております。
皆が皆、誠実な人間であるならば世界は平和なのになあ、と思います。
誰か、この気分の処し方を教えてください……。

ちょっと宣伝その3

 最近はいろいろと小説を投稿できるサイトがあるみたいですね。

この方面にはとんと疎くて今まで触れる機会がありませんでしたが今回、先の記事であげた「エブリスタ」さん以外にも、別の小説を投稿してみました。

 

カクヨムさん

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889102454

こちらで投稿しています。

ジャンルはライトノベルです。

お暇な時にでもどうぞ。

ちょっと宣伝その2

 こちらもある縁で知り合った方です。

『あらいぐまタスカル』というウェブページを運営されています。

不用品の販売やオークション出品代行等、誰かの「たすかる」の声のために活動されています。
とても気さくな方で、色々と相談にも乗っていただけると思います。
神戸を中心に何かお困りの方がいらっしゃったら一度、こちらに声をかけてみてはいかがでしょうか?

 

良品質の中古パソコンの販売も手がけていらっしゃいます。

中古品は安価な反面、不安がつきまとうものです。

ですがこちらでは使用しているパーツは全てメーカ純正品。

中古といえども品質は新品に劣りません。

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写真は取り扱い商品の一例です。


↓↓

『あらいぐまタスカル』
https://araigumatasukaru.jimdofree.com/


こちらが件のページです。

ちょっと宣伝その1

 最近、とある縁で知り合った方から 『エブリスタ』 なるものの存在を聞きました。
いわゆる小説投稿サイトのようです。
8年前くらいからあったサービスのようなのですが、恥ずかしながらこの時までその存在を知らず……。
コンテストを開催したり、投稿作品が書籍化されたりと殷賑な様子です。
というワケなので僕も登録してみました。

↓↓

https://estar.jp/_crea_u?c=U2FsdGVkX18xXOTc5MDkyNvLLVKvgLxPg7gybeKusFco41

こちらがページです。
おやつ感覚でさくさくっと読める作品を多めに投稿してみようと思います。

年に一度のチョコレート祭

 突然ですが、バレンタインデーは年に一度しかありません。
ということは百貨店等で催されるチョコレートフェアも年に一度しかありません。
つまりバレンタインデー限定チョコを買う機会も年に一度しかありません。
すなわちバレンタインデー限定チョコを食べる機会もまた年に一度しかありません。
というワケで今年も行って参りました、バレンタインフェア!

 

 

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「セゾンファクトリー」さんより。
フリーズドライしたイチゴにホワイトチョコを染み込ませてあります。
このチョコ自体は昨年以前も販売されていましたが、今年は風味がグレードアップしているとのこと。
噛んで食感を楽しむもよし、口の中で転がして甘味と酸味を堪能するもよし。
いつかは宇宙食のスタンダードになるかもしれません。
ちなみに同様の製法で作られたバナナチョコもありました。

 

 

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祇園辻利」さんより。
今年新発売の抹茶もちショコラです。
食感はまさしくよく搗いた餅のようです。
中に抹茶クリームが入っています。
そのままでも美味しいのですが、付属の抹茶を振りかけると苦味がちょうどよいアクセントに。
来年もあるかどうか分からないと言われたので慌てて購入しました。

 

 

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こちらも「祇園辻利」さんより。
よくばりチョコレートセット。
抹茶チョコ・ほうじ茶チョコ・玄米茶チョコ・ほうじ茶ティーバッグが入っています。
チョコレートに合うお茶は? と問われれば紅茶やコーヒーを思い浮かべる人は多いハズ。
しかしこのチョコは洋であり和でもあります。
不思議なことにほうじ茶がよく合うのです。
こちらのお店、百貨店のバレンタインフェアでは毎年出店されています。
一昨年にはチョコの試食と併せて、ほうじ茶の試飲もさせていただきました。
とても美味だったのを覚えています。
それ以降ブースからはお茶の姿が消え、チョコのみが並んでおりましたが、祈りが通じたのでしょうか。
ティーバッグを同梱するという素晴らしいお茶対応です。

 

 

 

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「VESTRI」さんより。
レミーノ4と呼ばれる、クラシック・ラズベリー・ピスタチオ・カフェの4種のチョコです。
色合いからも想像がつくとおり、舌触りはなめらかで且つ濃厚な味わいです。
これを噛むのは勿体ないない。
風味としてはピスタチオの芳ばしさが飛び抜けていました。
こちらはちょっと薄めのミルクティーと食べるのが良いですね。
同ブランドの他製品にはかわいらしいスプーンが付属しているものもあります。

 

 

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「ca ca o」さんより
昨年から引き続いて出店。
写真は柚子とパッションフルーツ
柚子を使ったチョコレートというのはここ数年でよく見かけるようになりましたが、
その味はと言うと、うっすら柚子の香りがしないでもない……? という控えめなものが大半です。
ところがこちらは別格。
柚子の香りどころか柚子そのものの味がしっかりします。
例えるならば市販の上等なチョコに柚子をしぼったような、確かな味わいです。
これだけの味と香りがするならば、柚子チョコというより”チョコ柚子”を称しても良いのではないでしょうか。
もう一点のパッションフルーツも酸味が絶妙です。
……と、ここまで書いて去年まったく同じ組み合わせで買ったことを思い出しました。
記事も似たような内容ですね。

 


 毎年この時期はカタログを見ているだけでもわくわくします。
その中でも初出店のケルノンダルドワーズという青色のチョコを食べてみたかったのですが、赴くのが遅く完売していました。
チョコに限らず食べ物というのは味だけを楽しむものではありません。
色合いや盛り付け、もちろん香りも、食を構成する重要な要素です。
見て楽しい、食べて美味しい、バレンタインチョコ。
次のバレンタインデーは2020年2月14日らしいので、今から楽しみですね。

愚行

 所用で歓楽街に出かけたある日のこと。
”本日は特にA型の血液が不足しています”というプラカードを掲げた人が。
献血の協力を呼びかける案内です。
何度も足を運ぶ場所なのですが、この種のプラカードがいつも揚がっていて、
本当に不足しているのだろうかと訝ったことがあります。
というのも血液センターの存在は知っていて、そこに備蓄された血液でやりくりできないものかと、
浅慮も甚だしい考えを持っておったのです。
そういう考え方をしていたこともあり、案内を見るたびに通り過ぎていました。
ところがこの日、気の迷いというか、普段ならさして気にも留めない献血センターに足を運んでいました。
僕自身は人一倍健康というワケではありませんが、衣食住にはそれなりに恵まれていますから、
人に分け与えられる血液だって少しくらいはあります。
こんな血でも誰かの役に立つなら……と利己的な僕には珍しい社会貢献への気持ちが萌芽した瞬間なのでした。
20以上の設問に回答し、献血可能な年齢や体重であることも確認して、簡単な診察を受けて――。
当然ながら渡航経験やエイズに関しては慎重なくらい確認を求められます。
採った血液を輸血に使うのだから当たり前ですね。
審査は通り、献血ルームに向かいます。
僕が行ったセンターでは400mlの献血しか実施していませんでした。
(献血にも全血献血、成分献血とあり、献血量もいくつか種類があるのを後で知りました)
さて、センターでいろいろと話を伺ってみると、現実は思っていたのとは全く異なっておりました。
まず輸血用血液は備蓄どころか常に不足しているとの由。
これは単純に 輸血量>献血量 ということなのですが、話を聞くまでこれをイメージできなかったのは、
『怪我等の出血に対する輸血量は全体の3%程度』という事実を知らなかったことによります。
輸血というとたとえば車両事故等の大怪我で大量の出血をした時に行うものというイメージが強いですが、
実際は癌や循環器系の病の治療に使われるのが大半なのだそうです。
それなら、まあ僕が今日やったことも少しは役に立つのだろうなあと思いながら腕に刺された管を眺めます。
温かい紅茶を飲みながら(献血前と献血中は温かい飲み物を飲むことが勧められる)待つこと30分。
特に何の問題もなく採血終了。
センターで10分ほど休憩しつつ、今度はアイスココアで一服です。
この時は特に異常はなかったのです。
ちょっと眩暈がするとか、足元がふらつくくらいのことを予想していたのですが健康そのもの。
人間、少々血液が減っても大丈夫なのだという慢心があったのでしょう。
センターで10分休憩した後、帰宅するため歩いて10分ほどの距離にあるバス停に向かって歩きます。
途中、エスカレータも利用しましたがここでも異常はナシ。
バス停に着くと乗る予定だったバスがちょうど発進してしまいました。
季節は夏。
次のバスが来るまで10数分あります。
炎天下で待てば熱中症の恐れもあったので、申し訳ないと思いながらすぐ傍の百貨店に入りました。
その途端、急に目の前が真っ暗になり倒れました。
自分がうつ伏せに倒れているのは分かるのですが、体が動かせません。
店員さんがやって来られ、抱えられるようにして座らされました。
「ここでしばらく休まれてください」
そう言われたのまでは覚えていますが、次の瞬間には何も分からなくなりました。
声をかけられたので目を覚ますと、店員さんやら警備員さんやら5人ほどが僕を囲んでおりました。
聞けば責任者らしい方が僕に声をかけてくださったようなのですが、反応がなかったので救急車を呼んだとのこと。
嗚呼、これは大事になってしまったと思いました。
この時にはまだ目の前は少し暗かったのですが既に意識はハッキリしていて、思考も会話も問題はありませんでした。
今日は何月何日か、ここがどこか分かるか、倒れる前に何をしていたか等々……救護師さんに訊かれます。
その全てに明瞭に答えることができました。
記憶がないのは座ってから意識が戻るまでの5分程度。
ほどなくして救急車が到着しました。
隊員の方には救護師さんと僕が状況を説明します。
結果、この症状では搬送したところで休憩する以外の処置がないので、病院への搬送はしないとのこと。
大事に発展しなくて良かったと思いましたが、同時にそんなことで救急車を出動させてしまったことには申し訳なさしかありません。
社会に貢献するつもりが却ってお世話になってしまうとは、悔いて余りある不覚です……。

その後、予定通りバスにて帰宅
お世話になった百貨店と救急に丁重にお礼とお詫びをいたしましたとさ……。