「ローグ・ワン スターウォーズストーリー」に関するあれこれ

 ローグワン スターウォーズストーリーを鑑賞。
今回初めて、3D4DXを利用しました。
神戸ではこの設備を備えている劇場が少なく、なかなか足を運べなかったのでした。
昨年、インデペンデンスデイリサージェンス公開時にも行きたかったのですが結局行けず、
スターウォーズは何としても4DXで、と思っていたのでした。

実のところ、今作にはあまり興味が湧きませんでした。
タイトルにスターウォーズの文字はあるもののナンバリングではないし、ジェダイが滅びた(とされる)時代の話なので、
剣劇が魅力のひとつでもある作品にそれがないのは、観る前からあまり面白くないのではと食わず嫌いをしていたのです。
イメージとしては壮大な二次創作、でしょうか。
おそらく『フォースの覚醒』がいまひとつ面白くなかったのも、尾を引いていたのかもしれません。
ところがあるキッカケで2D字幕を観て、その先入観が全くの誤りであると思い知らされました。
ナンバリングと比して遜色のない、それどころか本編以上にスリリングでドラマ性に満ちたスピンオフでした。
分かってはいましたが、主要人物全員が死亡するというのはあまりに悲しすぎます。
しかしその涙を拭ってでもこれは3D4DXで観なければ! と思ったのでした。


< 静と動の展開 >


ローグワンでは”静”と”動”の展開が交互に、しかも絶妙なタイミングで挟まれます。
冒頭、科学者ゲイレン・アーソが帝国に連れられてから、
偽名を使っていた娘ジン・アーソが反乱軍に保護されるまでは登場人物の説明の必要もあり、坦々と進んでいきます。
ここがあまり起伏がないために人物の把握が難しかったという意見もありました。
特にこの後にも登場するソウ・ゲレラの人物像は掴みにくい印象があります。
ジンが地下に隠れ、そこから保護したソウの登場の仕方、そこから一気に十数年が経過するので両者の関係性もわからず頭に残りにくいのです。
ここまでが”静”だとすると、惑星ジェダでの帝国軍とソウ一味の衝突~デス・スターのレーザー砲により崩壊するジェダからの脱出は、
一転して”動”の展開となり瞬きするのも惜しいくらいの怒涛のシーンの連続です。
さらに惑星イードゥーに不時着し、帝国軍に悟られないよう偵察するキャシアンたちの姿はまさしく”静”であり、
それを台無しにするかのように飛来したX-ウィング隊による襲撃により、悲劇的な”動”の展開に繋がります。
ここからは再び”静”に戻り、唯一の根拠がジンの発言である帝国軍の究極兵器の真偽を巡って反乱軍で意見が割れ、
キャシアンはじめ戦うことを選んだ者たちが鹵獲したシャトルで惑星スカリフのゲートをくぐり抜けます。
無事に降り立っても彼らにはシタデルタワーに収められた設計図の奪取と、それを手助けするために敵を撹乱するという任務があります。
スターウォーズ世界の敵拠点というのはいつも意外と簡単に忍び込めるようです。
『新たなる希望』でもルークたちは気付かれずに初代デス・スターに侵入し、レイアの救出に成功しています。
タワー侵入からデータ保管庫に辿り着くまでのカメラワークは旧三部作を意識したと思われる場面が多く、
本編に忠実なスピンオフという印象を受けました。
保管庫の警備を削ぐために有志が各所を爆破するところからはラストまで究極の”動”が連続します。
歩兵対歩兵の銃撃戦、そこに巨体で迫るAT-ACTが叩きつける絶望感、お馴染みのBGMと共に立ち上がった反乱軍による
掩護射撃、スカリフ宙域での大規模な宇宙戦など。
『新たなる希望』で反乱軍といいながら兵器がずいぶん少なかった理由は、スカリフでの損耗が原因だったのかもしれません。
この息もつかせぬ展開こそがスターウォーズの大きな魅力ではないでしょうか。
主役のジェダイはいませんでしたが、チアルートというフォースの伝道師のような人物がおり、彼自身はジェダイではないにも関わらず、
マスタースイッチを起動する際は悠々と戦場を歩きながらただの一発も被弾しません。
劇中で彼が何度も言うようにフォースと共にあったお陰かもしれません。
前身となるクローントルーパーと異なり、ストームトルーパーは射撃が下手です。
お互いにそこそこの近距離で撃ち合いになっても、その弾が命中することはなかなかありません。
旧三部作ではなぜそこまで腕が悪いのかという疑問と、それに対する答えもいろいろ出ていますが、
今回のチアルートを見るに彼らの腕が悪いのではなく、フォースの加護が働いていたのかもしれません。
静動からは離れますが今回、シールドの質感や表現方法が新鮮でした。
これまでは”シールド”という言葉が度々登場するも、それがどのようなものかは視覚的には曖昧なものが多いのです。
旧三部作では着弾はしているハズだが何となく表面で爆発していて本体には傷がついていない――という見せ方です。
『ジェダイの帰還』でデス・スターIIに攻撃をしかけるランドたちが、消滅しているハズのシールドが機能していると気付き、
すぐに反転して宇宙戦にもつれ込んだので、ここでもシールドがどのようなものかは見た目には分かりません。
視覚的に見えるようになったのは『ファントム・メナス』でのドロイディカやグンガン族が用いたシールドでしょうか。
特にナブーでの戦いに於いて、高速で飛来するものは弾くが、ゆっくり進むものは透過するという性質が描写されました。
ローグ・ワンでは惑星スカリフ全体を覆うシールドがやはり目を引きます。
X-ウィングの侵入を阻止するためにゲートが閉じられますがこの時、すんでのところでシールドに阻まれた機体が衝突、
破片がシールド上を滑っていくという描写がされています。
これまでは光弾がぶつかって消滅……というくらいしか表現がなかったので、シールドの質感がよく分かる瞬間でした。

 

< 過去作とのつながり >

 

 スピンオフなので本編と矛盾がないように展開しているのは当然ですが、ファンサービスも随所にちりばめられています。

たとえばターキン総督の登場。
クレニック長官との確執などを表現するうえで度々登場しますが、今作に不可欠かといえばそうでもありません。
たとえば両者の間に上官のような役割を持つ何者かを登場させ、ターキンの意向をその何者かを通して
クレニックに伝える、という方法もあります。
ターキンを演じていたピーター・カッシング氏はもう亡くなっていますが、フルCGを用いてまで見事に復活させたのは、
『新たなる希望』『シスの復讐』を観てきた人にとっては新鮮かつ懐かしい想いをしたことでしょう。
CGといえばラストに登場したレイア姫も見事な再現でした。

惑星ジェダで絡んできた2人組。
キャシアンとジンにすれ違いざまに絡んだ2人組は、ドクターエヴァサンとポンダバーバ。
『新たなる希望』でルークに難癖をつけ、オビ=ワンに腕を斬られた人ですね。
デス・スターの攻撃から無事に脱出できたのに、短気な性格を控えていれば斬られずにすんだでしょうに。


他にも登場人物で言えばペイル・オーガナやアンティリーズなどがいますが、これらは既に他所でも出尽くしているでしょうから、
BGMで気になった点をいくつか。
音楽はシリーズを手掛けていたジョン・ウィリアムズ氏ではなくマイケル・ジアッチーノ氏の作曲です。
ナンバリングでないこともあってか、冒頭のスターウォーズのメインテーマもなければ、
オープニングロール(あらすじが手前から奥に流れていくやつ)もありません。
スターウォーズでありながら、それとはまた違うもの、という感覚を開始1秒で味わうのでした。

-帝国のテーマ-
こう書くと誤解が生じますが、ローグ・ワンにおける帝国のテーマです。
曲名は「the imperial SUITE」。「He's here for us」の35秒あたりからも帝国を象徴する旋律です。
重厚感と勇ましさ、影になっていたスターデストロイヤーがこのBGMとともに先端から徐々に姿を現す時の絶望感は、
さすが! と言う他ありません。
正直、この曲がファースト・オーダーのテーマでも良いのではないかとさえ思いました。
旧作の「帝国のマーチ」は次第にダースベイダーのテーマのようになっていきましたが、
「the imperial SUITE」=クレニック長官のイメージがだんだんと強くなってきます。

-スカリフの戦い-
曲名は「AT-ACT assault」。
設計図奪取のためにスカリフに侵入した反乱軍有志と帝国軍との戦いで流れるBGM。
少数で侵入したため、いざ戦闘となると圧倒的な物量に有志は劣勢になります。
そこに敵の通信を傍受した反乱軍が立ち上がり、艦隊をスカリフ宙域にジャンプさせたと同時に
メインテーマの一部が流れるというお約束ながら熱い展開です。
このメインテーマの入り方は『ジェダイの帰還』のセールバージの戦いによく似ています。

-ジン・アーソのテーマ-
曲名は「JYN ERSO & HOPE SUITE」。
本編では父ゲイレン・アーソの最期や、スカリフがデス・スターに攻撃されジンとキャシアンが迫る爆炎を前に抱擁するシーンで
印象的に使われています。
後者は「your father would be proud」の一部でもコーラスとともに感動的なシーンを盛り上げます。
この曲の雰囲気、『クローンの攻撃』の「愛のテーマ」を思わせる部分がいくつかあります。
ローグ・ワンは愛をテーマにした物語ではありませんが、ジンとゲイレンの親子愛や、
激戦を経て最後にジンとキャシアンとの間に芽生えたと思われる愛、チアルートとベイズの親友愛など、
それぞれが命を散らす間際に見せた愛は悲しくも美しいものであります。

-ダース・ベイダーの猛攻-
曲名は「HOPE」。
これだけ聴くと、どこが”希望”なのかと疑いたくなるくらい陰惨で、終末を感じさせる物々しい旋律です。
実際はこの時に払った犠牲と、生き延びた少数の手によって反乱軍に希望が繋がれるので曲名に間違いはありません。
ここは暗闇にダース・ベイダーの呼吸音と禍々しく伸びる赤色のライトセーバーが不気味なシーンです。
加えて反乱軍の兵士たちがシスの力に為す術なく蹂躙されていくという、ベイダー卿も大張り切りの大舞台です。
ブラスターは弾き返され、フォースで壁や天井に叩きつけられ、ブラスターは見えない力で没収され、
挙げ句に光刃で容赦なく斬り捨てられていく……。
この曲の冒頭のコーラスは、『シスの復讐』でムスタファーに集まった分離主義者をアナキンが粛清する際に流れた、
「Anakin's Dark Deeds」によく似ています。
状況も両場面はよく似ていて、どちらもジェダイ(シス)を相手にするには無力も同然の敵が悲鳴を上げる中、
躊躇なくそれらを薙ぎ払っていくという、シスの暗黒卿らしい無慈悲なシーンです。
ローグ・ワンではあと一歩のところで反乱軍を取り逃がし、ベイダーが飛び去る艦を見下ろすところでは、
お馴染みの「帝国のマーチ」の一部が使われています。
細かいことですがよくよく聴くと、ただ「帝国のマーチ」の一部を切り取っただけではなく、その直前に、
『ジェダイの帰還』序盤、パルパティーン皇帝が到着した際に流れるBGMの冒頭部分が用いられています。


 スピンオフとして『新たなる希望』の数分前までを描いているローグ・ワンですが、本編を知らずとも
今作だけを観ても充分に楽しめる濃密な内容、展開そしてドラマでした。
イードゥーでの戦い、スカリフ地上戦、スカリフ宇宙戦の迫力は過去ナンバリング作品以上だったと思います。
これは現在稼働中の”スターウォーズ バトルポッド”のステージにぜひ追加してほしいところです。
それにしても撮影技術の問題とはいえ旧三部作を観ると、あの時代に惑星全体を覆うシールドがあったとはとても思えません……。