お別れ……

 現在継続中の地域猫保護活動。
活動の最終目的は、”個体数ゼロによる解散”にあるので、進捗しているハズなのですが……。
進んでいるということはつまり、個体数が減ったということ……。


またひとつ、小さな命が天へ。
僕がこの活動を始めた頃から居る、地域では最古参の猫です。
数か月前から鳴き声がおかしくなり、日に日に細くなっていくのでした。
歯は前の2本を残してすべてなくなっているので、食欲はあるのですがうまく咀嚼、嚥下ができません。
あまりの衰弱ぶりにいつもの先生に診てもらいます。
もうかなり弱っていて食べているところを後ろから洗濯ネットで覆うだけで簡単に捕獲できました。
検査によれば腎臓、肝臓の数値が基準値を大きくはずれているとのこと。
年齢も少なくとも13歳を過ぎており、老衰という判断もできるといいます。
外にいながら猫エイズやパルボウイルス等の感染性の病気を持っていないので、病気が原因ではないとも。
しかし栄養分が足りていないので急遽、入院となりました。
そういえばクッキーでさえ入院したことがなかったなあ、と思いながら3泊ほどお任せします。
点滴を受けている猫は実に大人しく、もはや暴れる元気もないのかと思いました。
こちらの姿を見るとゆっくり近づいてきたのは、いつもいる公園に帰りたいと言っていたのかもしれません。

おそらくもう大丈夫だろう。
だが相当な覚悟が必要だ、という言葉と共に帰ってきた猫を自宅で預かります。
朝晩の投薬と、注射器による食事が必要だったのです。
しかしそれらは殆ど用を為さないまま終わりました。
夜中、痙攣を起こしたこの子はチェーンストークス呼吸が始まり、慌てて病院に連れて行ったところで、
「あと数時間の命だろう。病院で最後までケアをするか、古巣で畢わらせるかを考えてほしい」
と言われました。
この子にとって病院は生涯の最後の数パーセントにも満たない時間を過ごした場所です。
エンゼルケアもしてもらえたでしょうが、いつもいる公園で生を終わらせることとしました。
タクシーで帰る途中も、もう呼吸が止まっているのではないかと思わせるくらい静かでした。
(チェーンストークス呼吸は睡眠時無呼吸症候群のように、1分程度の時間を置いて急に深呼吸するような息遣いをします)
公園に辿り着き、いつも食事をしている場所に連れて行った時。
昨年末に亡くなった猫と同じように一度だけ鳴き、そのまま息を引き取ったのでした。