有馬温泉に行く4

 さすがに短期間で4回目となる有馬行きでは、もう書くこともないだろうと思っていましたが、
感銘を受けた出来事もあったのでここに。
今回は湯遊びではなく静養目的なので、人の多いホテルを避けて旅館を選びます。
お気に入りの『奥の細道』さんは改装中のため、姉妹館である『旅篭』さんにお世話になります。
母体は宿泊施設として『奥の細道』と『旅篭』、料亭として『関所』という3つの施設を運営されていて、
いずれも有馬にあります。
『旅篭』さんは『奥の細道』に比して観光地に近くて名所巡りや買い物が便利な反面、
規模や部屋数、設備等が一回り小さいイメージです。
とはいえ母体が同じなので当然、雰囲気は変わりません。

さて今回は3人宿泊で8畳のお部屋を予約していました。
それ以外だと2人限定の洋室、団体客用の大部屋しかないので必然とこうなるのです。
有馬駅に到着し、旅館までの送迎をお願いすると見覚えのある車がやってきます。
運転席から降りてこられたスタッフさんにも見覚えがあります。
奥の細道が改装中、姉妹館である旅篭でお仕事をされているようです。
通算で3度目となる顔合わせではそろそろ親近感も湧いてこようというものです。
フロントで手続を済ませ、さて部屋に案内していただく……という段になったとき。
開かれた扉の奥はこうなっていました。




そんなハズはない、と手元の予約票を確認します。
たしかに8畳の部屋で手続きをしています。
しかし通されたのはどう見ても団体客用の20畳です。
聞くとこの部屋が空いていたので通した、とのこと。
他にも8畳部屋を利用していた人がいたし、洋室も埋まっていました。
つまり他の宿泊客にも同様の機会があつたにも関わらず、便宜を図ってくださったようなのです。
持てあます広さに加えて窓からの眺望は良く、お手洗いも洗面台も快適この上ない仕様でした。
他の部屋がお手洗い無し(各階に共同のお手洗いあり)だったので、なおさら申し訳なく思いました。
これだけでも破格の歓待だったのですが……。



団体客用の部屋に泊まっているので当然、食事処も相応の広さでした。
写真では分かりづらいですがこちらも20畳はあるでしょう。
奥の細道でもそうでしたが食事処は部屋ごとに仕切られていて、周囲の人や声を気にせずに食を楽しむことができます。
いわば”個”が保たれているようなもので、僕としてはこのふたつの旅館は『宿泊施設を持つ料亭』と見ています。



前菜。
これだけでお腹が膨れますね。
12品あるのは有馬温泉が拓かれた時、12の宿坊が建てられたことに由来します。



奥にあるのはオコゼの天ぷら。
おかきのような食感でした。



大好き、焼き物!
桜鯛と筍。
木の芽味噌がとにかく美味です。



下にあるのは焼き茄子です。
花弁に見えるのは百合根だとか。



ハッキリとは覚えていませんが10種類ちかい具材が入っています。
実は席についた時にアンケート用紙のようなものが置かれていて、
炊き込みに入れてよい具材にチェックをつけて提出するようになっています。
嫌いな具やアレルギーの関係から入れて欲しくないものを除外できるわけですね。
僕は全部入れてもらいました。

この他に名物の雲海鍋というものがあるのですが、これの魅力は写真では伝わりません。
出来上がりももちろんですが、その過程がまた面白いのです。



食後のデザート。
さすがに手の込んだもの、というわけではありませんがチョコレートソースが美味。
甘すぎず苦すぎずの加減が特にイチゴによく合います。



朝食も同じ場所で。
これの他に目の前で出汁巻き卵を焼いてくれます。
朝は温野菜が食べ放題で、自分で好きな野菜を好きなだけ取り、しゃぶしゃぶにします。
これだけでもお腹いっぱいになるのです。



食後は紅茶とデザート。
かたちは違いますがグレープフルーツにこんがりザラメは奥の細道でも出た逸品です。


さて、料理の実演や由来の説明、料理を運ぶ等は職人さんがされるのですが、
ここにも奥の細道で料理されていた職人さんがいらっしゃいました。
残念ながら『関所』に移られた方もいるようで全員との再会は叶いませんでしたが、
変わらぬ真摯さにどこか懐かしさを覚えたのでした。
名前は違えど母体は同じ。
居心地の良さは流石の一言ではとても足りません。
温泉は他所に比べて小さいかもしれませんが、もともと客室数も少ないのでほとんど借切り状態で入浴できます。
(しかもやはりと言うべきか浴場も柔らかい畳敷きなので足にとても優しい)
料理で楽しみ、好きなだけ入湯でき、もてなしは温かい。
これ以上、望むものなどありますまい。
旅行サイトで4.8の評価を得ているのも納得です。



 お土産。



有馬といえば炭酸煎餅です。
実物は紙のような薄さ、軽さ、あっさりとした甘さ。
職人さんの手作業で作られていて、本店ではその様子を観ることができます。
スーパー等では類似品が売られていますが、本場とは表面の色艶や食感は全く異なります。



大通りから小路に入ったところに、各地のラムネやサイダーを扱っているお店があります。
この他にもカレーサイダーやドリアンサイダー、カステラサイダーやわさびラムネ等。
なかなか勇気の要るものありますが、たいていは美味しいです。


 そろそろ温泉には厳しい気候になってくるので当面、有馬に行くことはないでしょう。
しかし温泉以外にも界隈には切手博物館や玩具館等がありますし、名物のロープウェーを利用すれば六甲山という観光地にも行けます。
こちらには牧場や広大な面積を活かした植物園、オルゴール博物館等が遊び場もあります。
お時間ある方は一度訪れてみてはいかがでせうか。