リンクスになれなかった男

(本記事はテレビゲーム・アーマードコアのお話です。興味のない方はごめんなさい)

 テレビゲームはそれなりに嗜みます。
生まれた頃からファミコンがあったので、まさしくテレビゲームと共に育った世代といえましょう。
今でこそ携帯ゲームが普及していますが当時は家庭での据え置き機。
誰もが持っているワケではないので遊びたいとなると自然、持っている子の家にお邪魔することになります。
小学生低学年あたりから外で遊ぶ子、ゲームに耽る子が分かれたような気がします。
僕はというと家にはファミコンはじめ、PCエンジンやら3DOやらが揃っていたのでそういうものを嗜んでいましたが、
外を駆け回って遊んでいた時間もそれなりにあったと記憶しています。
さてファミコン時代からマリオ、グラディウスドラクエとプレイし、スーパーファミコンの進化に胸躍らせ、
セガサターンプレイステーションのCGに驚き、プレイステーション2の精彩さに見惚れ、ドリームキャストの画像の滑らかさに圧倒され、
xboxあたりから実写さながらの映像に息を呑んだものです。

想い出による補正もあるのでしょうが、僕としてはファミコン~初代プレイステーション頃が一番面白かったように思います。
その時分というのは多くのメーカー(それこそ名前すら知らないような)が競うようにソフトを発表し、
イデアも多種多様な作品が犇めいておりました。
無名だが長く遊べるソフト、世界観や操作性の妙など、ラインアップそのものが満載の玩具箱をひっくり返したような、
次から次へ……という楽しさがありました。
しかしハードの性能が上がりだすと綺羅星のごとく存在していたメーカーが次々と撤退し、資本力のある大手メーカーが、
有名どころのシリーズを続ける、という構図ができあがりました。
ファミコン時代と違い、ひとつのソフトを開発する環境が中小零細には用意できないのが最たる理由だと聞きます。
ゲームソフトは完成して初めて売上→回収が成立しますから、長期請負工事のように段階的に資金の回収ができず、
開発にあっては莫大な時間と回収まで存続できるだけの資金力が必要なのでしょう。
所謂スマホゲームというものが乱発されるのも無理ならぬお話ですね。

さて、そうしたシリーズものの中に「アーマード・コア」というものがあります。
初代プレイステーションで第一作が発売されて以来、現在も続編が作られています。
内容の説明は省略するとして、僕はこのシリーズを初代から嗜んでいました。
ACのカスタマイズや世界観、台詞回し等が好みに当たったのでしょう。
操作は慣れるまでは大変ですがコツを掴めば思い通りにACを動かせます。
動かせたのです。
最近、少し時間がとれたので今更ながら「アーマード・コア4」を買ってみました。
映像は美麗です。
実写なのではないかと思わせるほどのオープニング、重厚なBGMも相まって荒廃した世界観が圧倒的な迫力で伝わってきます。
さあ、やってみようとゲームを進めると最初の段階で躓きました。
操作系が従前と全く異なるのです。
自機の移動もジャンプも攻撃も、何もかもが違うのです。
言ってみれば今までローマ字入力をしていたキーボードで、キーの配列がデタラメになった上にかな入力を強いられたような。
それでもなんとかチュートリアルを終えると、今度はガレージで詰まります。
おまけに各パラメータの数値が桁を間違っているのではないかと錯覚させます。
体力を表すAPは過去作では8000程度であったものが40000近くに、武器の攻撃力も6000が最大だったものが10000を
軽く超える等、ドラクエしか遊んだことのない人が急にFFに触れたようなものです。
とにかく何もかもが違うわけですから満足に操作することもできず、ようやく多少の動かし方を覚えた時には今度は敵の速さについていけない、
というアクションゲームに最も不向きな欠点を晒す羽目になりました。
特に敵ネクストが速すぎて画面の中央に捉えるどころかロックオンすらままなりません。
ラストレイヴンでは最終ステージのジナイーダや裏ステージのパルヴァライザーを辛くも倒せる程度にはACに慣れていたハズが、
たった1機の、それも序盤の敵にさえ敵わないとは情けないことこの上ありません。
これは無理だと断念したところ、続編の「フォーアンサー」のほうがまだ操作は易しいと知り、今度はこちらを試してみます。
情報どおり、ガレージの仕組みや操作はこちらのほうが分かりやすくなっています。
ミッションも程よい難易度で最初のうちはストレスなく進めます。
一番のウリである巨大兵器との戦いもギガベースやランドクラブくらいなら相手にできるようになりました。
が、相変わらずネクスト相手になると、そのスピード感に手も足も出ません……。
自在に動かせるようになったら爽快感に酔いしれるのだろうなあと思いながら、ホワイトグリントで完全に手詰まりになっています。
僕にはリンクスの素質はないようです。

なんというか時代(進化)に追いつけない自分を実感し、少し寂しくなりました。
かくも複雑な操作体系を体得してゲームを楽しんでいる人がいると思うと、そうした適応力の高さに羨望を抱かずにおれません。