えべっさん

 西日本ではお正月の初詣よりも盛り上がる祭事があります。
「十日えびす」です。
通称「えべっさん」は1月9日(宵えびす)、10日(本えびす)、11日(残り福)の3日にかけて開かれ、特に初日、二日目はそれはもうたいそうな賑わいなのだそうです。
総本山、兵庫県西宮にある西宮神社では福男選びが行われます。
開門と同時に参拝者たちが本殿を目指して猛ダッシュ。
先着3人目までを福男とし、その一年における幸福を身に集めることができるといわれています。
この福男選びにはトラブルもあり、開門時に参拝者の一味が他の走者を妨害しただとか、門は右側が僅かに先に開くのでそこに走者が殺到するとか……。
折角の神事で怪我でもすれば倖(さいわい)どころか禍(わざわい)を年初めにして受くことになりますね。
もちろん自分が一番幸福になりたいから先頭を目指して走るわけですが、参拝者の誰もが自分よりも他人に幸せになってほしいと、互いに先頭を譲る――なんて光景も見てみたい気がするのですが、これはまあ無理な話でしょう。
幸せは自分の手でつかむもの。
誰かに譲ってもらうものではありません。
そのくせ神仏には縋ってしまうのですから、人間とはかくも呆れ果てた浅ましい姿を晒すのでしょうなあ。
かくいう僕もしつかり年初に詣でましたが。



 
 さて、そんな「えべっさん」に初めて行きました。
写真は柳原蛭子神社にて、残り福の様子。
仕事の都合で最終日にしか足を運べなかったのですが、それでもこの殷賑ぶり。
さすがに写真を撮ることは憚られたのですが、実はここのお賽銭箱の奥にはマグロが一尾供えられています。
どうやらマグロにお金を貼り付けると、「お金が身につく」という意味に転じるようです。
なるほど納得ですね。
(僕は普通に二礼二拍手一礼で祈念しました)


この柳原蛭子神社、どうやら足利尊氏将軍ともゆかりがあるようです。


すぐ隣には大黒天様がいらっしゃいます。
頭の中で七福神を思い出したとき、「大黒」「弁天」と名前が挙がりますが、正しくは「大黒天」「弁財天」ですね。
(弁の字は厳密にはもっと複雑ですが、ここでは省略します)
日本には神様が多くいらっしゃいますね。
これを節操なしと見るか、あるいは信心深さの表れととるかは分かれましょう。
大事なのは自分の中の神とどう向き合うか、ではないでしょうか。