突然ですが、僕は賢い人が好きです。
そんなの誰でもそうだろう、と思われるかもしれません。
バカが好きだという人はあまりいないでしょうから。
僕はそこそこにお笑い番組を観ます。
(しょうもないバラエティ番組ではありません。やたら高級料理を振る舞うインフレバラエティは駄目です。
僕が観るのは……まあ、ゴッドオブエンターテインメントとか……)
よく考えると人を笑わせるというのも才能がいるというか、難しいものですよね。
コントにせよ漫才にせよシナリオを練る知力が必要なわけですからね。
お笑い芸人の中で最近注目しているのが、ロザンの宇治原氏です。
といっても漫才が面白いからという理由ではありません。
氏の知性です。
主に見かけるのは「Qさま」と「平成教育学院」ですね。
不定期で「タイムショック」というのもあります。
いずれに出ても非常に高い正解率。
仮に自分が知らない問題でも、手がかりを見つけて類推する思考の過程にただただ敬服するばかりです。
僕は氏の知性に惚れています。
僕もあれくらい知識と知恵を蓄えたいところです。
「Qさま」に関して言えば見所は宇治原氏の活躍だけではありません。
あれは基本が10人によるチーム戦。
全員が時間内に正解しなければならないわけで、ただ漫然と答えるだけでは駄目なんですね。
チームの構成員の強弱を見て戦略を立てていかなくてはならない。
テレビを観ていて久しぶりに面白いと思えた番組です。
実際にご覧の方は分かると思いますが、知性に富む人ほど解答席は後ろに回ります。
後ろの人ほど知識が多いわけですから、前の人が取りこぼした問題にも解答しなければなりません。
賢い人(知識量ではなく)は解答席が前にあっても敢えて難しい問題を消化しておき、
後に控える解答者に簡単な問題を残して負担を軽くする……というチームワークを見せます。
また仮に難問が残ってしまった場合でも後の解答者はそれにしっかり正解し、
前の人たちの解答を無駄にしないように頑張ります。
そういうチームプレイが観ていて面白いわけです。
で、この番組の出演者もまた賢い人が揃っているわけです。
付け加えておきますが、ここでいう”賢い人”とは単に学力の話ではありません。
人間性といいましょうか。
先に述べたチームプレイも賢さのひとつなのですが、高人格が多いのです。
たとえば誰かがミスをしても下劣な茶化しをしたり侮ったりはしません。
次の問題で挽回しようと気持ちを新たにする人の声がかかり、ミスをした人もそれで多少は救われます。
このフォローの仕方も巧みだなあ、と思います。
間違えてしまったことを責めても仕方がない。
それよりもそのミスを引きずって後々に響くことのほうが問題だ、と。
そういう思考ができるわけですね。
で、その中にいる宇治原氏はチームでも尊敬されています。
その知性を妬んだり、揶揄ったりすることもありません。
皆が氏の知力に敬意を表しているし、司会者もしつこくならない程度に賛辞を述べています。
また彼は彼でそれに驕ったりする様子も見せず、あくまで謙虚に(しかし自信に満ちて)構えています。
ここで一方、「平成教育学院」に触れます。
こちらも番組の様態はクイズ形式です。
前者と違うのはこちらが個人戦である点。
「みんドリ」なるコーナーでは一応のチーム戦の形をとっていますが、そのコーナーが終われば、
やはり解答者は個人で各問題に答えていきます。
この平成教育学院にも宇治原氏が出ています。
だいたい2回に1回くらいでしょうか。
出演すればたいていトップですし、トップのみが挑戦できる漢検1級レベルの書き取り問題もさらりと正答します。
苦手なジャンルはないのかと思うくらいの正解率です。
ところが同じクイズ番組でも、出演者のレベルには天地ほどの開きがあります。
こちらはまず低劣な茶化しがあります。
なぜここに出ているのかと思うような芸人(劇団○○○とか○戸田とか)が賤しくも発言権獲得を争うように
喋っては場を常に笑いに持っていこうとします。
(その笑わせ方のまたつまらないこと……あんたら、元気な中学生かよ)
氏にネタをやらせるとか、相方を引き合いに出して人格の優劣をつけるとか(もちろん氏に不利なように)
とかく眉を顰めたくなる場面多しです。
この番組では彼はふかわりょう氏のような立場なのです。
そこに最近、顔を出し始めたのが東大芸人という肩書きで現る藤本氏。
こちらは前述のお笑い芸人よりさらにヒドイ感じです。
プライドがあるのかないのか、宇治原氏に敵意むき出しで挑みます。
正々堂々と知力によって勝負をつければいいのに、この男の狡猾さはそこかしこに見え隠れ。
彼の場合は自分を高みに押し上げて相手に勝つのではなく、相手を下に貶めて自分が優位に立とうとするタイプです。
実際に戦ってみると五分五分で正解率だけみれば甲乙はつけがたいのですが……。
いかんせんこの藤本氏は言動がまだまだお子ちゃまキング。
「宇治原に勝ちたい!」
のではなく、
「宇治原を自分より下に置きたい」
という思考の根底が見え見えな策略を披露したりします。
(宇治原氏が新聞か何かでQさまについて語った記事を、わざわざ平成教育に持ち込んだりする知能犯。
その背景に”平成メンバー全員を心理面で味方につけ、氏を孤立させる”意図があることが明らかです)
ハッキリ言って、藤本氏が宇治原氏に克つなど100年早い話です。
知力面では五分でも、人格では如何ともしがたい差があります。
彼が挑めば挑むほど、それを涼しい顔でさらりと躱す宇治原氏の度量の大きさに僕は爽快感を得るのです。
さて、平成での宇治原氏のような境遇。
実は僕も小さな社会でながら似たような体験をしています。
僕は経理をインテリのやる仕事だと思ったことはこれまで一度もありません。
須く事務系というのは机に向かい頭を働かせているイメージこそありましたが、それをインテリの仕事だと思えば、
それを目指していた僕もその範疇に入ることになり、その考え方は傲慢だと思っていたからです。
確かに専門的な知識は要りますが、それは他でも同じこと。
体を使う仕事でも例えば土木作業などではそれ専門の工具等があり、扱いには修練が必要です。
習得にあたって頭を使うのか、体で覚えるのかの違いしかない。
最近まではそう思っていました。
ところがまあ……どうでしょう。
忘年会の記事を読んでいただければ分かるのですが、会社にはこんなのしかいません。
9割がこれです。
盛り上がる話題は風俗とかそのテの話ばかり。
卑猥な単語が出るたびにヘンに過熱するところは思春期真っ盛り。
僕はもうちょっと大人の会話がしたいんですけどね。
別に株とかの資産運用をしろというのではないのです。
それはあくまで僕の趣味であって、それだけを話題にしてもつまりません。
ただね、25歳以上が多数いて(中には40代も)この雰囲気はないだろうと。
あんたら、ちょっとは恥ずかしいとか思わないのかと。
妙に哀しくなりましたね。
僕はこんなところに居るべきなのだろうか。
場違いなんじゃなかろうかとさえ思いました。
それでですね、彼らは彼らで自分らの世界が基準ですから、それに当てはまらない人物を嘲弄するわけですね。
つまり僕です。
輪に入れない僕を酒の肴にするかのように……。
その時の屈辱たるや並々ではありません。
自分より遥かに知性に劣る人間に馬鹿にされるほど腹立たしいことはありません。
酒と煙草と女の話でしか盛り上がることのできないジョックに蔑される屈辱。
僕は決してインテリではありません(重ねて言っておきます)が、ちょっとだけ宇治原氏の気持ちが分かりました。
Qさまみたいな職場だったらなあ、と思ふ今日このごろであります。