さ~て年末のジョックは?

 ブログ復帰第一弾の記事としてもう少し華々しくて景気の良い話題にしたいところでございます。
しかしながら心中、これを語らずにはいられませぬ。
というわけで……。


面倒くさくバカバカしい忘年会が去年もありました。
不景気だの資金繰りがどうだの売り上げが落ち込んでいるだの言いながら、こういうことはしっかりやる。
業績落ちてるなら控えればいいのに。
さて、この重要性に乏しい忘年会という酒飲み大会に、ジョックが多数集まりました。
僕は本社、ジョック共は本社から徒歩20分ほどの支店におります。
2つの拠点の社員が一堂に会し、年忘れに興じる。
こう言えば聞こえはいいのですが……。
これがもう低劣下品で横暴非道にして嗜虐残忍、誠に不愉快極まりない有様でございました。
早く帰らせてくれよう……市場は今日も開いてるんだよう。
阿呆の相手するよりFXやってるほうがよほど実利的だよう。
と、内心舌打ちしながら全く飲めない酒に口をつけるフリをしておりました。
そこへ現れ出でたる中学生――もとい営業社員たち。
鼻で笑いながら彼らのお喋りを聞いていたのですが、その内容が眉を顰めたくなるものばかり。
こいつら、僕より年上だよなあ……と思いながら聞くとはなしに聞いていたら!
なんと声をかけてくるではありませんかっ!
無視するのも可哀想なので、応対してあげましたがすぐに可哀想なのは僕だと気付きます。

うちのジョック共の低劣さ、下品さの一部をここに載せてみたいと思います。
載せてどうなるものでもないですが、ジョックの醜態を晒すことでひとつの掣肘になり、
またこれらの犠牲になっている善良な市民のわずかな活力源になれば幸いです。



登場人物は次の通り。

僕(男 24歳 独身)
A(男 33歳 妻子あり)
B(男 40歳 妻子あり)
C(男 29歳 妻 あり)
D(男 35歳 独身)
E(男 24歳 独身)


勤務している場所が僕とA~Eで違うので、連中と遭うと必然的に僕ひとりに5人が絡むことになります。
さながら合同面接の如き形勢でございました。




D:「いっつも休みはなにしとん?」
僕:「家にいることが多いですね。祝日だったら相場見てますね」
C:「相場って株とか?」
僕:「そうです」
A:「引きこもりか? しょうもない男やな。キャバクラとか行かんの?」
僕:「キャバクラ?」
A:「男やったらキャバやろ」
B:「普通そうやんなあ」
僕:「行ったことないですね」(呆れ顔)
E:「好きなタイプとかおらんの? たとえば芸能人やったら誰とか」
僕:「いやぁ、あんまり興味が……」
D:「なにっ、お前、女に興味ないんか!? ホモなんか!?」
A:「おーい!! ここにホモがおるぞー!」
僕:「いや、あんまり芸能人が出る番組観てないので」
D:「あーそういう意味か。いきなりホモ宣言するからビックリしたわ」
C:「え、なにお前? テレビ観ないんか?」
A:「テレビも観ないし、女にも興味ないって……お前はホンマしょうもない奴やな」
E:「Aさん、こいつオタクやから、女のことなんかどうでもいいんちゃいます?」
A:「あ~”萌え”か。キモイわ」
B:「エロゲばっかすんなや。男やったら女抱いてナンボやで」
D:「今度風俗連れてったるわ。○○(店名)に巨乳の○○(たぶん女性名)がおってな」
僕:「あ、いえ、また今度でいいです」
A:「若いんやからもっと性欲に素直になれや。お前も胸揉みたいとか思うこともあるやろ」
僕:「いえ、だから興味ないんですって」
A:「は? ”だから”?」
僕:「…………」(絶句)
A:「年上には敬語使えや」
僕:「はぁ…………」(絶句、再び)
B:「女に興味ないなんか絶対ウソやんなあ。俺らなんか四六時中、女のこと考えとうけどな」
C:「そうっすよね。仕事中もそればっかり」
D:「そんなんやから事故起こすねん」
A:「ほな、芸能人とか抜きにして好みのタイプは? これやったら答えられるやろ?」
僕:「そうですね……知的な人とか好きですね」
A:「キモっ!」
B:「知的とか絶対ウソやわ」
D:「胸がデカイとか、尻がデカイとかもっとあるやろ」
僕:「まあ、今の僕はそんなところです」(意味不明な回答)
C:「自分って抜いたりするん?」
A:「いきなり何訊いとんねん!」
C:「ちょっと興味あって」
僕:「いえ、ないですね」(もちろんウソ)
E:「え、マジで!?」
A:「マジでないん!?」
僕:「はい」(もちろんウソ)
B:「絶対ウソや。抜いたことないとかもうそれ、男ちゃうで」
A:「じゃあ夢精は?」
僕:「まあそれはありますかね」
D:「あんねや? そらやっぱそういう願望があるんやて。そういう夢見るんやからな」
僕:「はあ、そんなもんですか」(小声で)
E:「はよ免許取れや。ナンパして車乗れんかったら恰好悪いで」
C:「あれ、お前らって歳いくつやっけ?」
僕:「24です」
E:「俺も24っす」
B:「同い年かいや。(Eに向かって)それやのに、何ちょっと上から目線で喋っとんねんな」
E:「いや、同い年ですけど学年は俺のほうが1コ上なんすよ」









 というような会話を延々30分くらい続けていました。
(会話じゃなくてひどくレベルの低い面談か)
実はこの場に僕より少し年上の女性が1人混じっていました。
あんたら男ジョックだけならともかく、女性がいる傍でそんな話するなよ……。
なんて最初の頃は気を遣い、話題を逸らそうと考えながら受け答えをしていたものですが……。
その女、別に厭な顔をするわけでもなく、割と普通に相槌を打ったりしていました。
(嗚呼、この女もこいつらと同じ程度の思考か)
様子を見ていてそう思った僕はもはや気を遣うこともなく、ただ時を過ぎるのを待っていたわけです。
随分と楽しそうに喋る輩を見ながら思ったことはひとつ。


”こいつら、僕より年上なんだよな……?”


まるで中学生を相手にしているような錯覚に襲われました。
生きた時間の永さは等しく人を成長させるわけではないのだ、と知りました。
本来は謙る時に使うべき表現ではありますが、こやつらは誠に馬齢を重ねてきただけなのだと。
脳の中身は思春期真っ最中。
妻帯者も混じっているというのに、風俗がどうだのと羞恥心はないのだろうか。
伴侶に失礼とは思わないのだろうか。
女性がいるのならこの話題は控えようという配慮のひとつできないのだろうか。
いろいろと考えているとバカらしくなってくるわけであります。
人語を多少解するだけの犬畜生にも劣るジョックと同じ部屋にいて、同じ空気を吸っていると思うだけで不愉快になります。

おそらく彼らは最後まで生き残るでしょう。
この地球に何があっても、ジョックだけはしぶとく生き延びるに違いありません。
その旺盛すぎる性欲が種の保存に大いに貢献するのは間違いありません。
そうして地に満ち満ちたジョックが蔓延る母なる大地……。
想像するに厭な世界であります。