トーテム

 トーテム(シルク・ドゥ・ソレイユ)を観てきました。
キダムあたりから興味があったのですが、ちょうどこの時期に大阪公演があったので。
サーカスは幼い頃に一度連れられたきりで、当時は空中ブランコやライオンが登場しての演技など、
”サーカス”と聞いて大多数が思い浮かべる演目を観た記憶があります。
CM等でトーテムの演技が紹介されているのを観た時、最近のサーカスはこうなのか……と思ったものです。
迫力や美しさが想像していたのとは全く違っていました。
昔と比べても技術の水準が異なるので詮無いことですが、サーカスというと身体能力の高い人たちが、
常人には到底真似できない運動をするものと捉えていました。
実際、トーテムもそれは同じなのですが、プロジェクションマッピングや音響効果等が用いられていて、
ひとつのストーリーを追っているような感覚です。
つまり目を引く演技がぶつ切りではなく、テーマに沿って構成されているところは映画や演劇に通じるでしょうか。
その演技も派手なものから、肉体のみを使った力強い演目、演者の器用さと最新の技術を融合させた幻想的なアトラクション等々。
人間の体でこんなことができるのか……と息を呑む瞬間の連続でした。
また随所に喜劇的なシーン(少し古いですがミスタービーンのような)が差し挟まれ、ストーリーに緩急がつけられています。
驚異の演技に呼吸も忘れるほど目を奪われた後、子どもでも分かるコミカルな劇が始まると、場の緊張は一転して弛緩します。
そうかと思えばまたハラハラドキドキさせる演技が押し寄せ、驚愕と笑いを繰り返しながらプログラムは進んでいくのでした。

楽しむことと、楽しませること。
これは単純に受動と能動の関係ではありません。
どちらかの意図が他方に伝わらなければ、楽しむことも楽しませることもできないでしょう。
その意味でトーテムの面白さは老若男女すべてが必ず笑うことができ、驚くことができ、感動することができるポイントがありました。
始まりから終わりまでずっと退屈だった、という人は少ないでしょう。
派手なものが好き、大袈裟なものが好き、道具を使った演技が見たい、道具に頼らず肉体だけの演技が見たい。
そうした全ての要望に万遍なく応え、観客すべてを楽しませ、魅了するトーテムは素晴らしいものでした。